痛みの「発信源」と「原因」は違っている事が多いという話をしました
痛みがあると当然痛みを庇(かば)って歩くので左右非対称になっていき、左右のバランスも当然崩れていきます。それが別の問題(二次的な問題)に発展して行くのはイメージできると思います。みんな左右非対称であれば整っていないような気がして左右均等にしたがります。その為、「バランス崩れていますね」「骨盤歪んでますよ」という言葉を本気で受けて止めてしまいます。以前にこういう方がいました。
その方は68歳男性で生まれつき足の長さが5-10センチほど違う方でした。
若い事はそれでも筋肉があったのでキレイに歩けたし、走れていたそうですが歳を重ねるにつれて片足(短い方)は筋肉の減少が進み長い方に頼って動いていました。長い足に負担が乗りすぎて遂に右足も痛みが出てきてしまい歩くのが困難になってきました。それからトレーナーを付けたいという事で縁があり私が担当することになりました。
初めてお会いした時には今までと違った問題(足の長さ自体が違う)だったので少し戸惑いました。なぜなら、左右対称が基本として学校では教えられてきましたし、セミナーや講習会でも「当然足の長さや腕の長さは同じ」ということが前提で勉強してきたからです。
「機能的に左右非対称なものをを対称に近づけようとする考え方」が一般的です。しかし、その方は「構造的に左右非対称」なので左右対称になることはあり得ません。という事は右と左で同じように筋肉を使おうとしたら左右非対称になるからです。68年間生きてきた中で最も最適な動き方はその経験の中で培っているはずなのでそれは、一般的な「左右対称」はその人にとっては「左右非対称」になります。
「良い選手は姿勢が良い」と言われたり、あの選手は「体幹が強い」と良い選手に対して言うことがあります。しかし普段はすごく猫背で決して姿勢が良いとは言えないけれどプレーをさせたらピカイチだったりする選手がいます。100mの世界王者のウサイン・ボルト選手も脊柱側湾症と言われています。そんな世界王者の走り方を矯正して逆に遅くなるといったことも頻繁に起こってきます。教科書通りの「良い姿勢」「良い動き」というのはその人にとって良いかどうかは全く別の話。
5-10cmも足の長さが違えば明らかにその違いに気がつきますが幼少期の怪我だったり、元々5mmくらいの違いであれば一切その違いに気がつかない方が多いです。5mmの足の長さの違いがあれば骨盤に歪みが来ても当然です。その歪みはその人にとって
「必要な歪み」で「痛みの原因になる歪み」ではありません。
足の長さだけでなく色々な要素があって全てが左右対称である人というはほぼいないのではないでしょうか?例えば目の視力や眼球の動き、歯の形や顎の発達など挙げればキリがありません。問題は「左右非対称であること」ではなくてそれを「うまく使いこなせていない自分」だということになります。
筋肉/関節の使い方や全身の関節の協調性がうまくできなければ「動きの流れ」がスムーズではなくなり一部に負担がかかり続けてそれが痛みにつながっていきます。
決して左右非対称が悪いわけでもありません。パラリンピックを見ていれば様々なアスリートがいます。義足の選手や、義手の選手など様々ですが体の一部がないのに凄いプレーを見せてくれています。しかし、両手、両足があるのに痛みで悩んでる人がいるのはおかしいですよね。
筋肉が一本なくても大丈夫、関節が硬くても、緩くても大丈夫。その身体を使いこなせるようにトレーニングしていけば問題ありません。身体を使いこなせない(自分で自分の身体をコントロールできない)のに関わらず筋肉を大きくするばかりに目を向けていれば当然身体への負担は増えていきます。負担が一定の部分にかかり過ぎれば当然損傷(怪我をする)していきます。
筋肉の貯筋もこれからの時代は大事ですが、決して筋肉の大きさだけでなく「コントロールできる身体」
も大事かなと思っています